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エンタメ

是枝裕和監督に聞く「万引き家族」に込めた思い

<是枝裕和監督インタビュー>

 是枝裕和監督の「万引き家族」(広島市中区のサロンシネマなどで公開中。2018年6月13日現在の情報です)が、カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)に輝きました。日本映画の受賞は1997年の「うなぎ」(今村昌平監督)以来、21年ぶりです。キャンペーンのために広島市を訪れた是枝監督に作品への思いなどを聞きました。

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<万引き家族 あらすじ>
 高層マンションの谷間に立つ古い平屋に、5人の家族が住んでいた。祖母の初枝(樹木希林)の年金が主な収入源だが、足りない生活費は万引で補っている。ある冬の日、父の治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は家から閉め出された少女ゆり(佐々木みゆ)を連れて帰る。母の信代(安藤サクラ)は家に帰そうとするが、ゆりが親から虐待されているのを感じ取って、自分の娘として育てる決意をする。信代の妹である亜紀(松岡茉優)も含め、一家は仲良く暮らす。しかし、平穏な日々は長く続かず...。

MAIN.jpg©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.



社会からこぼれた家族の姿 鮮明に

 ―受賞の反響は。
 日本に戻ってから、騒ぎになっているので驚きました。見知らぬ人から「おめでとう」と声を掛けられることが多いです。映画の話題が社会的なニュースとして新聞の1面を飾るのは、そうはないのでうれしいですね。

 ―今回の作品は、ある家族が親の死を隠し、年金を不正受給していた詐欺事件などから着想したと聞きました。
 家族で万引を続け、盗品を換金していた事件もヒントにしました。盗んだ釣りざおが家に残っていたので事件が発覚したそうです。不謹慎ですが、「家族で釣りをしたかったんだろうな」と感じて...。親子が釣りをするシーンを撮りたい、そしてそこに至るまでの話を映画にしたいと思いました。

 ―これまでも、「家族」をテーマにした作品で評価を得てきました。この作品では、どんな家族を描こうとしたのですか。
 家族の内側ではなくて、世間からこぼれ落ちた家族と社会との関係性やあつれきをきちっと描きたい、という思いがありました。物語の一家は軽犯罪を重ねていますが、肩を寄せ合って温かい暮らしを営んでいます。映画の後半では、その家族が社会によって、バラバラに解体されてしまいます。それが、僕にとっては大切にしたかった部分でした。
安藤サクラさん演じる母親が刑事の取り調べを受けるシーンで、「捨てた人は他にいるんじゃないんですか」とカメラ目線で言い放つせりふがあるんです。この作品は、あの一言に尽きるのではないでしょうか。
父親役のリリー・フランキーさんは、「監督はいつも憤っていますね」と僕に言います。「憤り」というより、違和感かもしれません。映画の中でこぶしを振り上げるつもりはありませんが、物語の家族のように社会からはじかれた人たちを自己責任で片づけてしまう世の中はどうなのか、という思いもありました。
また、子どもが成長していく物語でもあります。万引を重ねていく家族の中で、息子の祥太に罪悪感が芽生え、「もしかすると父親は悪い人では」と疑い始めます。息子は成長して父を超えていくのです。そこにも、注目してほしいですね。

SUB1.jpg©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.


「役者」と「役」出合う瞬間に立ち会う


 ―安藤さんの演技や存在感が、カンヌの審査員に高く評価されました。

 脚本を書いている段階では、リリーさんと祖母役の樹木希林さんの出演だけが決まっていました。母親役は40、50代の俳優を想定していて、30代の安藤さんは候補に挙げていませんでした。しかし、街で彼女とばったり出会って立ち話をして、「リリーさんと年齢差のある夫婦でもいいのでは」とひらめき、翌日にはオファーしました。
 安藤さんについて、リリーさんは「バケモノ」だと表現しますね。スクリーンの中で、演技ではない何かがほとばしっていました。撮影前に出産して母になり、彼女の内面に起きた変化が出ちゃったのでしょう。「役者」と「役」が稀有(けう)なタイミングで出合った瞬間に立ち会えて、僕はすごく幸せでした。

 ―子役の演出は。
 僕の作品では、子どもたちには脚本を渡さず、現場でせりふを伝えて演技をしてもらいます。とはいえ、子どもの個性や集中力が持続する時間はそれぞれ違うので、見極めて演出方法を変えています。
撮影当時に6歳だったゆり役の佐々木みゆちゃんは、負けず嫌いなんです。ゆりが警察官に祖母について尋ねられるシーンの撮影では、「どんなことを聞かれても、しゃべっちゃだめだよ」と演技指導しました。みゆちゃんが「自信がない」と言うので1時間ほど撮るのを待ちました。「カイリ(祥太役の城桧吏君)はできたよ」と話すと頑張ってくれて、撮影後はカイリの元に走っていって「勝った」と。

 ―最後に、観客へのメッセージをお願いします。
 製作当初は、予定していた公開規模もそれほど大きくなく、「自分の小さな宝物」のようなつもりで作ろうと考えていました。それが、パルムドール受賞をきっかけに公開される劇場が3倍近くも増えて、とてもうれしいです。見た人にも「これは自分だけに届けられた宝物だ」と感じてもらえればいいなと思っています。

SUB2.jpg©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.


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※プロフィル

 これえだ・ひろかず 1962年東京都出身。早稲田大を卒業後、テレビのドキュメンタリー番組の制作を経て、「幻の光」(95年)で映画監督デビュー。「誰も知らない」(2004年)では、主演の柳楽優弥さんがカンヌ国際映画祭男優賞、「そして父になる」(13年)が同映画祭審査員賞を受賞。他に「歩いても歩いても」(08年)「三度目の殺人」(17年)など。

SUB4.jpg©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.


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