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ありがとう大林監督 /ぷらっとHIROSHIMA

<ありがとう大林監督>

3.jpg撮影に臨む大林監督
(C)2020「海辺の映画館︱キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

「花筐」や新作「海辺の―」
反戦の思い フィルムに込め
 尾道市出身の大林宣彦監督がこの世を去り、映画関係者やファンの惜しむ声が増している。亡くなった4月10日は、新型コロナウイルスの感染拡大で延期された新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」の封切りが予定されていた。反戦の思いと、命が燃え尽きようとする表現者の執念に満ちた作品の公開が待たれる。
 「海辺の―」は、閉館を迎える尾道の映画館が舞台。最終日のオールナイト上映「日本の戦争映画大特集」を見ていた3人の若者が銀幕の世界に入り込み、戊辰戦争や日中戦争、太平洋戦争を体験していく。そして原爆投下前夜の広島へ。出会った移動劇団「桜隊」のメンバーを救うため、3人は奔走する―。
 アバンギャルドで魔術的な映像世界は、まさに大林ワールド。そこには、戦争を引き起こす国家への痛烈な批判と「映画の力で未来を変えたい」という大林監督の願いが込められている。ピカソの「ゲルニカ」になぞらえ、自分の映画を「シネマ・ゲルニカ」と呼んだ大林監督の精神が凝縮された作品だ。
 7歳で終戦を迎えたとき、親子心中を決意して短刀を用意した母の姿に「母ちゃんに殺されてもいいな」と思ったという大林監督。「反戦」は、青春ファンタジーの「尾道3部作」にも、さりげなく表現された。「さびしんぼう」(1985年)に登場する幽霊のような少女に、戦争で命を散らした身近な人々の姿を投影させたという。
 この国の在りようを「戦前ではないか」と危機感を募らせ、10年ほど前からは厭戦の思いを込めた作品を相次いで発表。末期がんで余命宣告され、治療を受けながら撮影した「花筐/HANAGATAMI」(2017年)では、戦争で消耗品のように軽んじられる若者の青春を描いた。しかし、それを最後とせず、力を振り絞って20年ぶりに古里の尾道をロケ地に選び、「海辺の―」を完成させた。
 17年に早稲田大で開かれた特別講義では、「映画とはメイク・フィロソフィー(哲学)。君たちのフィロソフィーが未来のために役立つと信じている」と、表現を目指す大学生に繰り返し伝えていた。大林監督のフィロソフィーは遺作とともに、次世代に引き継がれていく。

4.jpg(C)2020「海辺の映画館−キネマの玉手箱」製作委員会/PSC