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エンタメ

容赦なき差別の闇/小山田浩子の本棚掘り

 広島市在住の芥川賞作家・小山田浩子さんが、テーマに沿ったお薦めの一冊を月替わりで紹介します。
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【今月のテーマ】コロナ禍に読んでほしい一冊
『フラナリー・オコナー全短篇』上・下
横山貞子・訳

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ちくま文庫


容赦なき差別の闇
 本稿を書いている五月半ば、給付金も布マスクもまだ届いていない......が、そんな政策を選ぶ人々を選んだのは我々だ。大本営発表を信じ従うしかなかった、選挙権が今より限られていてSNSもなかった時代とは違う。耐え忍び日々の暮らしを工夫しながら世界の片隅ぶっているだけでいいのだろうか......ところで、平和な社会を誰より強く希求していてもおかしくない広島の人の投票率等にその思いが反映されているように見えないのはなぜだろう?
 先行きが不安なこの状況、あちこちで差別が噴出している。差別はずっとあった。被災地差別、沖縄差別、非正規差別、女性差別に外国人差別......が、当事者以外にそれはもしかして見えていなかったし見ないふりもできた。それが今や陽性者や他県ナンバー車、「自粛を要請」という謎の日本語に従っていないと判断された市民や施設への私刑、排外主義者や自己責任論で福祉の荒廃を進めてきた政治家をもてはやすマスコミ......人ってこんなに差別するんだ、それを隠さないんだ、いや今までは、目をそらせるところはそらし続けてきただけだ。
 本書が描くのは奴隷制や人種差別が差別とさえ認識されていなかった時代が徐々に変わりつつあるアメリカだ。心の底から自分のことを慎ましい優しい善人だと信じる人々が、善ゆえに選ぶ闇が容赦なく描かれる。血が流れ、人生を損ない、もう元に戻れない。カトリック教徒だったオコナーはそれを恩寵のようにすら描く。無意識に差別し続けることと、取り返しのつかぬ過ちと引き換えに目が開かれること......暗い現実を忘れさせるような、没入させ楽しませ癒やしてくれるような小説もたくさんある。でも、決してそうではない本書も、今の私たちにこそ重要な一冊だと思う。  短い間でしたが読んでくださり感謝します。またどこかで、かなうなら、今よりよりよくなった世界で。